「力は入るのに腕が上がらない」「歩きたいのに足がつっぱって前に出ない」
脳梗塞の後遺症で、“身体が自分のものではないように感じる”と多くの方が話します。
なぜ、筋肉はあるのに動かないのか?
なぜ、毎日リハビリしてもうまく動かないのか?
本記事では、脳梗塞の麻痺が起こる仕組みを専門家の視点で、しかし一般の方にも“すっと理解できる言葉”で解説します。
結論として、麻痺は「筋力の問題」ではなく
脳と身体の“神経の連携が途切れていること”が原因です。
ここを理解すると、「なぜリハビリが必要なのか」「どうすれば改善するのか」がはっきり見えるようになります。
脳梗塞で麻痺が起きる本当の理由

脳梗塞によって血管が詰まると、脳の一部がダメージを受けます。
特に「運動を指令する部分」が傷つくと、次のような現象が起こります。
●筋肉の命令がうまく届かない
手足を動かすとき、脳は神経を通して細かい命令を送ります。
しかし脳梗塞の後はその命令が
- 弱くなる
- 途切れる
- 伝わるルートが混乱する
このような状態になります。
筋肉自体はあるのに動かないのは「神経が伝わっていない」ためです。
●“動かし方のプログラム”が壊れてしまう
脳は身体を動かすための“動作プログラム”を持っています。
しかし脳梗塞でこのプログラムが部分的に壊れると、
- 力が入りすぎる
- 力が入らない
- 意図と違う動きになる
といった動作の乱れが起こります。
これが麻痺の本質です。
筋トレだけでは良くならない理由もここにあります。
よく起こる「麻痺の症状」とそのしくみ

脳からの命令が乱れると、次のような典型的な症状が現れます。
●力は入るのに動かせない
脳が「筋肉を協調させて動かす」命令を出せないため、
力はあるのにうまく動かせなくなります。
(例)膝を上げようとすると太ももが固まり、かえって動きがぎこちなくなる。
●つっぱる(痙縮)
脳の制御が弱くなると、筋肉が勝手に縮もうとする反応が強くなります。
これが「つっぱり」です。
●動かそうとすると代わりの筋肉が働く(代償動作)
腕を上げたいのに肩がすくむ
足を出したいのに体が横に揺れる
これらは麻痺の典型です。
麻痺を改善するために必要なのは「脳の再学習」

傷ついた脳は、別の神経ネットワークを使って新しい動きを再学習する力を持っています。
これを脳の“可塑性(かそせい)”と言います。
つまり、麻痺の改善は
脳が正しい動き方をもう一度覚えられるかどうか
にかかっています。
そのために必要なのが、次の3つです。
麻痺改善に重要な3つのポイント

1. 良い動きを何度も積み重ねること
脳は“正しい動き”を繰り返されたときに最も回復します。
逆に、悪い動きを続けるとその動きを覚えてしまいます。
(例)
分回し歩行 → 続けるほどクセとして脳に固定される
2. 姿勢と軸を整えること
脳は「安定した姿勢」からでないと手足をうまく動かせません。
姿勢が崩れると、
- つっぱり増加
- 動きの乱れ
- 力の入りすぎ
が起こり、麻痺が悪化して見えることも。
3. “必要な感覚”を取り戻すこと
脳は、姿勢・関節の角度・筋肉の張りなどの情報をもとに動きを作っています。
感覚がにぶると、脳は正しい命令を出せません。
感覚の再入力(感覚訓練)は改善の鍵です。
病院を退院した後も麻痺は改善する理由

脳は回復力を持ち続けており、
回復のタイムリミットは「3ヶ月」「6ヶ月」ではありません。
むしろ、退院後のほうが
- 普段の歩き方
- 家での姿勢
- 自主トレ
- 良くないクセの積み重ね
によって変化が大きく出る時期です。
正しい方向で積み重ねれば、何年経っても改善します。
発症3ヶ月で回復が止まった…これは本当?まだできる!脳梗塞の回復の見込み
自宅でできる“脳に効く”トレーニング

※危険のない内容に絞っています。
●1)膝立ち・立位での体幹安定訓練
姿勢の土台が整うと、脳が動きを作りやすくなります。
●2)ゆっくり丁寧に関節を動かす
速く動かすと代償が出て学習効果が下がるため、
“ゆっくり・小さく”が効果的です。
●3)日常動作の中で「良い動き」を意識
脳は日常動作から最も学習します。
麻痺改善が進まないと感じるときに見直すべきこと

- 正しい姿勢が保てているか
- 力が入りすぎていないか
- つっぱりで動きを邪魔していないか
- 痛みを我慢していないか
- 歩き方・手の使い方にクセがついていないか
ここがズレると、どれだけトレーニングしても効果が出ません。
訪問リハ・自費リハを利用するメリット

- 個別の原因分析ができる
- 姿勢・動きの“誤差”を正確に修正できる
- 自分では気づかないクセを改善できる
- 自主トレを効果が出る形に修正してもらえる
- 家での動作(起き上がり・立ち上がり・歩行)も指導可能
脳の再学習の成功には“正しい動作の積み重ね”が必要であり、
その精度を上げるのが訪問リハの価値です。
まとめ:麻痺は「脳の学び直し」で変わる
脳梗塞の麻痺は「筋力の問題」ではなく
脳と身体の連携が乱れている問題です。
そして脳は、
正しい動きを繰り返すことで再び学び直す力があります。
- 正しい姿勢
- 正しい動き
- 正しい感覚
この3つの積み重ねが改善の鍵です。
「発症から時間が経っているから…」
「もう変わらないかもしれない…」
そんなことはありません。
脳は、今この瞬間からでも変われます。
一緒に“思い通りに動く身体”を取り戻していきましょう。