【歩行のプロが解説】脳梗塞で悩む歩き方と改善方法

  • 投稿の最終変更日:2025年12月6日

脳梗塞のあと、「歩き方が変わってしまった」「このまま元に戻らないのでは」と不安になっていませんか。
実は、脳梗塞後の歩行には特有の“特徴”があり、その理由を理解すると、改善の道筋がはっきり見えるようになります。

私は脳卒中リハビリを専門とする理学療法士として、10年以上、歩行の改善に向き合ってきました。
この記事では、脳梗塞後に歩行がどう変わるのか、その特徴と原因、さらに改善のために必要なリハビリのポイントまで、専門的な内容をわかりやすく解説します。
読み終える頃には、「歩き方は今からでも変えられる」と感じられるはずです。


なぜ歩き方が変わってしまうのか

脳梗塞が起こると、脳の一部がダメージを受けます。
手足を動かす指令や、バランスを保つための情報処理がスムーズに行われなくなることで、

  • 足が思うように上がらない
  • 膝が抜ける
  • 体が片側に流れる・傾く

といった変化が生じます。

歩行は「脳が最も複雑に働く動作」と言われています。
そのため、脳の機能が低下すると、ほんのわずかな障害でも、歩き方が大きく変化することがあります。


片麻痺で起こりやすい典型的な歩行パターン

代表的な3つのパターンを紹介します。

1. 分回し歩行(ぶんまわし歩行)

――足が外側に大きく円を描く歩き方**

脳梗塞後の片麻痺で最も多いパターンのひとつが、
麻痺側の足を真っ直ぐ前に出せず、外側に円を描くように回しながら出す歩き方です。

原因の多くは以下の3つ

  • 股関節がうまく曲げられず、足が持ち上がらない
  • 足首が固定されてしまい、つま先が引きずりやすい
  • 体幹のバランスが悪く、重心移動ができていない

見た目の特徴としては、
「大きく外側に回しながら歩く」「歩幅が極端に広い」が挙げられます。

ヘルスウェアでよく見られる改善ポイント

分回し歩行は、
**股関節の前への振り出し(スイング)**と
**体重を乗せる力(立脚)**を改善すると、大きく変わります。

適切な刺激を入れることで、
回し足の“クセ”ではなく、神経の問題が整理されて正常な軌道が戻るケースが多い歩行パターンです。


2. トレンデレンブルグ歩行

――骨盤が左右に大きく揺れる歩き方**

片麻痺では、麻痺側の**中殿筋(お尻の外側の筋肉)**が働きづらくなることで起こります。

見た目の特徴

  • 麻痺側に体が傾きながら歩く
  • 骨盤が左右にカクカクと揺れる
  • ふらつきが強く、歩行に不安感がある

なぜ起こるのか?

中殿筋が弱い、というよりも
脳が中殿筋に“指令を出す”感覚入力が途切れているため、
支える力を出すタイミングがズレることが本質的な原因です。

改善ポイント

  • 立脚期に骨盤を水平に保てるようにする
  • お尻まわりの“力の入り方”を脳に再学習させる
  • 体幹の側方バランスを整える

ヘルスウェアの訪問リハでは、
立位での荷重誘導のトレーニングを行うことで、
歩いたときの骨盤の揺れが大幅に改善するケースが多くあります。


3. 内反尖足(ないはんせんそく)歩行

――足首が内側にねじれ、つま先立ちになる歩行**

片麻痺で最も歩行を困難にするのが、
**内反(足が内にひねられる)+尖足(つま先立ち)**が組み合わさる歩き方です。

典型的な特徴

  • つま先が地面に引っかかる
  • 足首が内側に入り込む
  • 足音が強く鳴る
  • 転倒リスクが高い

原因

内反尖足の背景には、
単純な筋力低下ではなく、
**ふくらはぎ(後脛骨筋・下腿三頭筋)に過剰な緊張が入る「痙縮」**が深く関わっています。

さらに、

  • 足裏の感覚低下
  • 足首の可動域の制限
  • 膝の伸びづらさ
    など、複数の要因が絡み合います。

改善の方向性

内反尖足は放置すると形が固まるため、初期段階での介入が非常に重要です。

改善方法としては

  • 足首の正しい軌道を“脳に再学習させる”徒手介入
  • 重心移動と足首の連動を整えるトレーニング
  • 必要に応じて装具(AFO)の選定
    が効果的です。

ヘルスウェアでは、
内反尖足の改善に特化した歩行再構築プログラムを提供しており、
「5年以上改善がない」という方でも変化を実感したケースが多数あります。


実際の臨床で多い“危険な歩き方”

次のような歩行は転倒リスクが非常に高く注意が必要です。

  • つま先が外を向きすぎている
  • 膝がガクッと抜ける
  • 上体が大きく左右に揺れる
  • 杖に体重を乗せすぎる

これらは“身体を守るための代償”として起こりますが、
放置すると固まってしまい、改善に時間がかかります。


歩行が変化する3つの原因

歩行の改善は、この原因を正しく押さえることが何より重要です。


① 麻痺による筋力・筋制御の低下

麻痺側の筋肉は、「力が出ない」のではなく「力の入れ方がわからなくなる」状態になります。
この“コントロールの障害”こそが、歩行を大きく乱す原因です。


② 感覚障害による足裏・脚の位置感覚のずれ

脳梗塞後は、足裏の感覚や、脚の位置を感じる感覚が鈍くなることがあります。
すると、

  • 踏んでいる感覚が分からない
  • 足の位置がズレる
  • どこに力を入れていいか分からない

という状態になり、歩行が不安定になります。


③ バランス機能の低下

脳は無意識に「倒れそうかどうか」を常に判断しています。
この感覚が低下すると、体重移動がうまくいかず、歩行の癖が強くなります。


脳梗塞の歩行はどこまで改善できる?

「歩行はどこまで戻るのか?」
これはほぼ全ての方が抱える疑問です。

結論から言えば、適切なリハビリを継続すれば、時間が経っていても改善できます。


改善が見込めるケースの特徴

  • 立ち上がり動作がある程度できる
  • 麻痺側の足に体重を乗せられる
  • 杖に頼りすぎていない
  • 関節が固まっていない

これらが揃っている方は、改善スピードが速い傾向にあります。


改善がゆっくりになる場合の要因

  • 膝の過伸展(膝折れ)
  • 足首の硬さ
  • 強い感覚障害
  • 歩く時間より座っている時間が長い

ただし、ゆっくりでも確実に改善します。


回復の“限界”と“伸びしろ”の違い

よく「もう限界ですか?」と聞かれますが、
実際には“限界”ではなく、“伸びしろに気づいていない”だけのケースが多いです。


歩行改善のために絶対に外せないリハビリのポイント


正しい立ち方の修正が第一歩

歩き方を変える前に、
まず立ち方を整えなければ歩行は安定しません。


足を運ぶ前の“体重移動”の練習

体重をどこへ移し、どのタイミングで足を出すか。
これを理解し、身体で覚えることが最重要です。


理学療法士が必ず見る「代償動作」

悪い癖が積み重なると、
本来使うべき筋肉が使われなくなり、歩行が硬くなります。


歩く量より“歩き方”が大切

1000歩の“間違った歩行”より、
100歩の“正しい歩行”の方が改善します。


自宅でできる歩行改善トレーニング


①立位での重心移動練習

  • 前後・左右へゆっくり移動
  • 麻痺側に体重をしっかり乗せる練習

②つまずきを減らす足首トレーニング

  • タオルギャザー
  • つま先の上下運動

③安全にできる歩行練習

  • 壁沿いを歩く
  • 家の中の“狭いスペース”を避ける

歩行が頭打ちになったと感じるときの見直しポイント


間違った歩き方が習慣化していないか

代償歩行が強くなると、歩けば歩くほど癖が固定します。


姿勢や体の使い方を再評価する

歩行改善は“姿勢改善”が土台になります。


しびれや感覚障害の影響も見落とさない

足裏の感覚が弱いと、歩行が安定しません。


訪問リハ・自費リハの活用で改善が加速する理由

マンツーマンで細かな歩行分析ができる

訪問型・自費リハビリでは、
“歩行の癖”を細かく見ながらその場で修正できます。


身体に合わせた負荷設定ができる

病院の時間制限や集団リハでは難しい部分です。


自宅環境で歩行練習ができるメリット

実生活の動線で練習できるのは大きな強みです。
転倒リスクの評価にも繋がります。


ヘルスウェアが歩行改善で大切にしていること

ヘルスウェアでは、
「歩き方の癖を取り除くこと」と
「正しい体の使い方を身体で理解すること」
を最重視しています。

あなたのペースで進められるマンツーマンリハビリなので、
“歩く自信を取り戻す”ことを目指します。

実際に、脳梗塞を発症後6年経過しても、歩行が変わり「装具」を外して歩けるようになった方がいらっしゃいます。


今からできる“歩行が変わる習慣”


毎日の立ち上がりを丁寧にする

立ち上がりが変わると歩き方も変わります。


歩く前の準備運動で転倒を防ぐ

特に足首の柔軟性は欠かせません。


疲れたときほど姿勢を確認する

姿勢の崩れは歩行の崩れに直結します。


まとめ:歩き方は、今からでも変えられる

脳梗塞後の歩行は、
時間が経っていても改善できます。

歩き方が変わると、生活が変わります。
「もう遅い」と感じていても、そこから改善する方はたくさんいます。

一歩ずつ、できることから始めていきましょう。

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