「手を握ろうとしても力が入らない」
「逆に、開こうとしても指がつっぱって開かない」
脳梗塞後、このような“手の動かしにくさ”に悩む方は非常に多くいます。
リハビリをしているのに変化を感じにくく、
「もうこの手は動かないのでは…」
と不安になることもあるかもしれません。
ですが、結論から言うと、
麻痺側の手が動かない原因は“筋力不足”ではありません。
本記事では、
・なぜ手が握れないのか
・なぜ手が開かないのか
・なぜリハビリをしても変わりにくいのか
そのメカニズムを専門家の視点で、わかりやすく解説します。
そして後半では、
改善のヒントと、今日から意識すべきポイントもお伝えします。
結論:手が動かない本当の原因は「脳と神経の誤作動」

麻痺側の手が動かない理由は、
筋肉が弱いからでも、手や指そのものが壊れているわけでも、年齢のせいでもありません。
原因は、
脳 → 神経 → 手指の筋肉
この情報の流れがうまくつながらなくなっています。
脳梗塞によって、
・動きを指令する神経
・力加減を調整する神経
・指を別々に動かす神経
これらがダメージを受けると、手は「思い通り」に動かなくなります。
脳梗塞で「手」が特に動きにくくなる理由

手は、身体の中でも特に脳の支配が強い部位です。
手は「脳の高性能エリア」で動いている
指先の細かい動きは、
脳の運動野・感覚野の中でも広い範囲を使っています。
そのため、
脳梗塞でわずかなダメージを受けただけでも、
手の動きには大きな影響が出やすくなります。
足より手の回復が遅れやすい理由
歩行は「反射」や「自動化された動き」が多いのに対し、
手の動きは
・つまむ
・開く
・回す
・力を調整する
といった高度な制御が必要です。
その分、回復にも時間がかかります。
なぜ「握れない」のか?そのメカニズム

手を握る動作は、実はとても高度な動きです。
指ごとに違う命令が必要
握るためには、
・親指
・人差し指
・中指
・薬指
・小指
それぞれに、異なるタイミングと力で命令が必要です。
脳梗塞後は、この細かな命令が出せなくなり、
「力を入れようとしても、うまくまとまらない」
状態になります。
力を入れると逆に固まることも
一生懸命握ろうとすると、
前腕や肩にまで力が入り、指が余計に動かなくなることがあります。
これは、
必要な筋肉だけを使えず、不要な筋肉まで同時に働いてしまう
ために起こります。
感覚が鈍くなっている
実は、
感覚がないと手はうまく動きません。
触っている感じ
指の位置
力の入り具合
これらの情報が脳に戻らないと、
脳は正しい命令を出せなくなります。
なぜ「開かない」のか?そのメカニズム

「握るより、開くほうが難しい」
これは多くの方が感じることです。
指を開く筋肉はもともと弱い
指を開く筋肉は、
握る筋肉に比べて細く、繊細です。
脳の指令が弱くなると、
開く筋肉がうまく働かず、
結果として「握ったまま戻らない」状態になります。
つっぱり(痙縮)が邪魔をする
脳からのブレーキが弱くなることで、
筋肉が過剰に縮もうとする状態を痙縮といいます。
特に
・指を曲げる筋肉
・手首を曲げる筋肉
は痙縮が出やすく、
一度握ると開きにくくなります。
力の調整ができなくなっている
健康な状態では、
「曲げる筋肉」と「伸ばす筋肉」がバランスよく働きます。
しかし麻痺があると、
曲げる筋肉だけが優位になり、
開く動きができなくなります。
「手だけ」の問題ではないという事実

多くの人が誤解している「手のリハビリ」
手が動かないと、
つい「握る練習」「指の体操」ばかりになりがちです。
しかし、それだけでは不十分なケースが多いです。
手だけ見ても改善しない理由
手の動きは
・肩
・肘
・体幹
・姿勢
すべてと連動しています。
肩が不安定なまま手を動かしても、
脳は「危険な動き」と判断し、
うまく指令を出しません。
肩・肘・手首の位置が重要
手の動きは、
肩 → 肘 → 手首 → 指
という連動で成り立っています。
途中が崩れると、指はさらに動きにくくなります。
姿勢がとても重要になります。
下記の文章で姿勢の重要性について説明しています。
脳梗塞の回復が伸び悩む理由と、停滞期を突破するための正しいリハビリの進め方
回復が進みにくい人に多い共通点

なかなか変化を感じにくい場合、
次のような点が影響していることがあります。
・力任せに動かしている
・速い動きばかり練習している
・つっぱりを無視している
・良くない動き方を繰り返している
脳は、
良い動きも、悪い動きも、同じように覚えてしまいます。
改善のカギは「正しい動きを脳に覚えさせること」

麻痺の改善に必要なのは、
筋トレではなく、脳の再学習です。
ゆっくり、正確に動かす
速さよりも、
「正しい順番」「正しい位置」が重要です。
力を抜く練習も大切
実は、
「力を入れる」より「力を抜く」ほうが難しいこともあります。
つっぱりを減らすことで、
動きは驚くほど変わることがあります。
自宅で意識したい改善のヒント

安全にできるポイントに絞ってお伝えします。
・手だけを見ず、姿勢を整える
・肩の力を抜いてから指を動かす
・できる範囲を小さく、丁寧に
・無理に開こうとしない
「できない動き」より
「できる動き」を大切にしてください。
改善が止まったと感じたときに見直すこと

・力任せになっていないか
・姿勢が崩れていないか
・痛みを我慢していないか
・動きが速すぎないか
これらがあると、
改善が止まってしまいます。
訪問リハ・自費リハで変わる理由

手の麻痺は、
・姿勢
・動かし方
・力加減
の“わずかなズレ”が大きく影響します。
マンツーマンでのリハビリでは、
・どこが邪魔しているのか
・どこから修正すべきか
を細かく確認できます。
自己流で続けるより、
正しい方向に修正することで、改善が加速するケースも少なくありません。
まとめ:手は「もう一度、学び直す」ことができる
麻痺側の手が動かないのは、
あなたの努力不足ではありません。
脳と神経の連携が乱れているだけです。
そして脳は、
正しい刺激と動きを繰り返すことで、学び直す力を持っています。
諦める必要はありません。
今からでも、変化は起こせます。
「どうせ動かない手」ではなく、
「まだ可能性のある手」として、向き合っていきましょう。