脳梗塞の後遺症で多い悩みのひとつが「肩の痛み」です。
動かすとズキッと痛む。服を着るたびにつらい。夜中にうずいて眠れない…。
こうした痛みは“仕方ない”と思われがちですが、実は多くのケースで 原因を理解し、適切に対処すれば改善できます。
私は理学療法士として神経系のリハビリを専門に10年以上携わってきました。
この記事では、脳梗塞後の肩の痛みが起こるメカニズム、改善のために必要な視点、そして自宅でできる対策まで分かりやすく解説します。
「まだ良くなる可能性がある」と前向きに感じてもらえる内容になっています。
脳梗塞の肩の痛みは“改善できる”。その理由

脳梗塞後の肩の痛みは、原因さえはっきりすればアプローチができます。
その理由はシンプルで、痛みの多くは 筋肉・関節・姿勢の問題による“力学的なトラブル” によって起こるからです。
改善の見込みがある主な理由
- 肩の“支える力”はトレーニングで高められる
- 動かし方はリハビリで学習し直せる
- 関節の保護は正しいポジショニングで可能
- 神経の働きは継続的な刺激で活性化する
つまり、痛みの正体を理解し、間違った使い方を正せば改善が期待できる ということです。
肩の痛みを引き起こす3つの主要メカニズム

脳梗塞後の肩の痛みは、次の3つが組み合わさって起こります。
亜脱臼(サブリクセーション)
特に麻痺側の肩では、腕を支える筋肉が弱まり、上腕骨が本来の位置からわずかに下方向へ引っ張られる状態 が起こります。
典型的な症状は
- 肩を上げると痛む
- だらんと腕が重い
- 肘が引っ張られるような感覚
などです。
痙縮(筋肉のこわばり)
脳の障害により筋肉に異常な緊張が入り、肩周囲が固まったように感じます。
特に胸の筋肉や上腕二頭筋の緊張が強いと 肩が前に詰まり、痛みを起こしやすい姿勢に固定されます。
動かさないことによる関節の硬さ
痛みや恐怖で腕を動かす機会が減ると、関節包や筋肉が固くなりやすく、
- 可動域の低下
- 肩を上げた時の強い痛み
- 動き始めのズキッとした痛み
を引き起こします。
多くの人が誤解している「肩の痛みのタイムリミット」

「退院後3ヶ月を過ぎると痛みが治らない」
「半年で固定される」
こうした言葉を耳にすることがありますが、これは誤解です。
痛みは“慢性化するほど改善しない”というわけではありません。
肩の痛みの多くは、
- 間違った動作
- 関節の負担
- 支える筋力の不足
といった 力学的ストレス が原因であるため、発症から時間が経っていても改善は可能です。
実際、発症から数年後に痛みが改善したケース も珍しくありません。
痛みを改善するために絶対に外せないリハビリのポイント

専門家が実際に行うアプローチを、一般の方にも分かるよう説明します。
肩甲骨の安定化
肩甲骨が不安定だと、腕を上げるたびに肩関節が詰まり、痛みが悪化します。
そのため、前鋸筋・僧帽筋下部・菱形筋といった“肩甲骨を支える筋肉”を優先的に鍛えます。
亜脱臼を起こさない姿勢づくり
麻痺側の腕は、
- 引っ張る
- ぶら下げる
- 肘をつかんで持ち上げる
などで亜脱臼が悪化します。
正しいポジショニングとしては
- 腕を身体に寄せる
- 肩をすくめない
- タオルやクッションで支える
- 巻き肩にならない
などが基本です。
痙縮を軽減し、動きの再学習を促す
胸筋・上腕二頭筋・広背筋の緊張が強い時は、
- ストレッチ
- 体幹の連動を使った動き
- 正しい腕の上げ方の学習
が必要です。
自宅でできる肩の痛みを軽減するエクササイズ

痛みが強くない範囲でできる、効果的なエクササイズを紹介します。
肩甲骨のゆっくりしたストレッチ
椅子に座り、背筋を伸ばして肩をゆっくり後ろに回します。
10回×2セット。
タオルを使った腕の支持
タオルを身体の横に置き、麻痺側の肘を軽く乗せることで腕の重さを軽減します。
壁を使った肩の可動域練習
指を壁につけ、ゆっくり上へ滑らせながら腕を上げます。
無理のない範囲で10回。
改善が停滞している時に見直すべきポイント

長期間痛みが続く時、多くの場合は
「原因に合っていない対処」を続けている
ことが原因です。
よくある例
- 痙縮が原因なのに筋トレをしている
- 亜脱臼があるのに腕を引っ張る動作を続けている
- 痛みを恐れてまったく動かしていない
- 体幹の使い方が悪く肩に負担が集中している
改善しないと感じる時こそ、専門家の評価が必要です。
訪問リハ・自費リハの活用で改善するケースがある

肩の痛みは、丁寧な評価と継続的なリハビリが必要な分野です。
病院リハは時間が限られているため、マンツーマンでしっかり時間を使える訪問リハ・自費リハは非常に相性が良い です。
ヘルスウェアでは、
- 亜脱臼の程度
- 肩甲骨の位置
- 姿勢・体幹のバランス
- 痙縮の影響
を細かく評価し、根本原因に合わせたリハビリを行っています。
痛みのない未来のために今日からできること

- 麻痺側の腕を大切に扱う
- 肩をすくめない
- 無理に腕を引っ張らせない
- 痛みのない範囲で積極的に動かす
- 必要に応じて支えを使う
これらはすべて、痛みの予防につながります。
まとめ
脳梗塞後の肩の痛みは、“仕方がないもの”ではありません。
原因を知り、正しい対処をすれば改善できる可能性は十分にあります。
もし今、
「どう動かすのが正しいか分からない」
「痛みが怖くて腕が使えない」
そんな悩みがあるなら、ぜひ一度ご相談ください。
身体は、今からでも変わります。