脳梗塞のあと、「歩き方が変わってしまった」「このまま元に戻らないのでは」と不安になっていませんか。
実は、脳梗塞後の歩行には特有の“特徴”があり、その理由を理解すると、改善の道筋がはっきり見えるようになります。
私は脳卒中リハビリを専門とする理学療法士として、10年以上、歩行の改善に向き合ってきました。
この記事では、脳梗塞後に歩行がどう変わるのか、その特徴と原因、さらに改善のために必要なリハビリのポイントまで、専門的な内容をわかりやすく解説します。
読み終える頃には、「歩き方は今からでも変えられる」と感じられるはずです。
なぜ歩き方が変わってしまうのか

脳梗塞が起こると、脳の一部がダメージを受けます。
手足を動かす指令や、バランスを保つための情報処理がスムーズに行われなくなることで、
- 足が思うように上がらない
- 膝が抜ける
- 体が片側に流れる・傾く
といった変化が生じます。
歩行は「脳が最も複雑に働く動作」と言われています。
そのため、脳の機能が低下すると、ほんのわずかな障害でも、歩き方が大きく変化することがあります。
片麻痺で起こりやすい典型的な歩行パターン

代表的な3つのパターンを紹介します。
1. 分回し歩行(ぶんまわし歩行)
――足が外側に大きく円を描く歩き方**
脳梗塞後の片麻痺で最も多いパターンのひとつが、
麻痺側の足を真っ直ぐ前に出せず、外側に円を描くように回しながら出す歩き方です。
原因の多くは以下の3つ
- 股関節がうまく曲げられず、足が持ち上がらない
- 足首が固定されてしまい、つま先が引きずりやすい
- 体幹のバランスが悪く、重心移動ができていない
見た目の特徴としては、
「大きく外側に回しながら歩く」「歩幅が極端に広い」が挙げられます。
ヘルスウェアでよく見られる改善ポイント
分回し歩行は、
**股関節の前への振り出し(スイング)**と
**体重を乗せる力(立脚)**を改善すると、大きく変わります。
適切な刺激を入れることで、
回し足の“クセ”ではなく、神経の問題が整理されて正常な軌道が戻るケースが多い歩行パターンです。
2. トレンデレンブルグ歩行
――骨盤が左右に大きく揺れる歩き方**
片麻痺では、麻痺側の**中殿筋(お尻の外側の筋肉)**が働きづらくなることで起こります。
見た目の特徴
- 麻痺側に体が傾きながら歩く
- 骨盤が左右にカクカクと揺れる
- ふらつきが強く、歩行に不安感がある
なぜ起こるのか?
中殿筋が弱い、というよりも
脳が中殿筋に“指令を出す”感覚入力が途切れているため、
支える力を出すタイミングがズレることが本質的な原因です。
改善ポイント
- 立脚期に骨盤を水平に保てるようにする
- お尻まわりの“力の入り方”を脳に再学習させる
- 体幹の側方バランスを整える
ヘルスウェアの訪問リハでは、
立位での荷重誘導のトレーニングを行うことで、
歩いたときの骨盤の揺れが大幅に改善するケースが多くあります。
3. 内反尖足(ないはんせんそく)歩行
――足首が内側にねじれ、つま先立ちになる歩行**
片麻痺で最も歩行を困難にするのが、
**内反(足が内にひねられる)+尖足(つま先立ち)**が組み合わさる歩き方です。
典型的な特徴
- つま先が地面に引っかかる
- 足首が内側に入り込む
- 足音が強く鳴る
- 転倒リスクが高い
原因
内反尖足の背景には、
単純な筋力低下ではなく、
**ふくらはぎ(後脛骨筋・下腿三頭筋)に過剰な緊張が入る「痙縮」**が深く関わっています。
さらに、
- 足裏の感覚低下
- 足首の可動域の制限
- 膝の伸びづらさ
など、複数の要因が絡み合います。
改善の方向性
内反尖足は放置すると形が固まるため、初期段階での介入が非常に重要です。
改善方法としては
- 足首の正しい軌道を“脳に再学習させる”徒手介入
- 重心移動と足首の連動を整えるトレーニング
- 必要に応じて装具(AFO)の選定
が効果的です。
ヘルスウェアでは、
内反尖足の改善に特化した歩行再構築プログラムを提供しており、
「5年以上改善がない」という方でも変化を実感したケースが多数あります。
実際の臨床で多い“危険な歩き方”

次のような歩行は転倒リスクが非常に高く注意が必要です。
- つま先が外を向きすぎている
- 膝がガクッと抜ける
- 上体が大きく左右に揺れる
- 杖に体重を乗せすぎる
これらは“身体を守るための代償”として起こりますが、
放置すると固まってしまい、改善に時間がかかります。
歩行が変化する3つの原因

歩行の改善は、この原因を正しく押さえることが何より重要です。
① 麻痺による筋力・筋制御の低下
麻痺側の筋肉は、「力が出ない」のではなく「力の入れ方がわからなくなる」状態になります。
この“コントロールの障害”こそが、歩行を大きく乱す原因です。
② 感覚障害による足裏・脚の位置感覚のずれ
脳梗塞後は、足裏の感覚や、脚の位置を感じる感覚が鈍くなることがあります。
すると、
- 踏んでいる感覚が分からない
- 足の位置がズレる
- どこに力を入れていいか分からない
という状態になり、歩行が不安定になります。
③ バランス機能の低下
脳は無意識に「倒れそうかどうか」を常に判断しています。
この感覚が低下すると、体重移動がうまくいかず、歩行の癖が強くなります。
脳梗塞の歩行はどこまで改善できる?

「歩行はどこまで戻るのか?」
これはほぼ全ての方が抱える疑問です。
結論から言えば、適切なリハビリを継続すれば、時間が経っていても改善できます。
改善が見込めるケースの特徴
- 立ち上がり動作がある程度できる
- 麻痺側の足に体重を乗せられる
- 杖に頼りすぎていない
- 関節が固まっていない
これらが揃っている方は、改善スピードが速い傾向にあります。
改善がゆっくりになる場合の要因
- 膝の過伸展(膝折れ)
- 足首の硬さ
- 強い感覚障害
- 歩く時間より座っている時間が長い
ただし、ゆっくりでも確実に改善します。
回復の“限界”と“伸びしろ”の違い
よく「もう限界ですか?」と聞かれますが、
実際には“限界”ではなく、“伸びしろに気づいていない”だけのケースが多いです。
歩行改善のために絶対に外せないリハビリのポイント

正しい立ち方の修正が第一歩
歩き方を変える前に、
まず立ち方を整えなければ歩行は安定しません。
足を運ぶ前の“体重移動”の練習
体重をどこへ移し、どのタイミングで足を出すか。
これを理解し、身体で覚えることが最重要です。
理学療法士が必ず見る「代償動作」
悪い癖が積み重なると、
本来使うべき筋肉が使われなくなり、歩行が硬くなります。
歩く量より“歩き方”が大切
1000歩の“間違った歩行”より、
100歩の“正しい歩行”の方が改善します。
自宅でできる歩行改善トレーニング

①立位での重心移動練習
- 前後・左右へゆっくり移動
- 麻痺側に体重をしっかり乗せる練習
②つまずきを減らす足首トレーニング
- タオルギャザー
- つま先の上下運動
③安全にできる歩行練習
- 壁沿いを歩く
- 家の中の“狭いスペース”を避ける
歩行が頭打ちになったと感じるときの見直しポイント

間違った歩き方が習慣化していないか
代償歩行が強くなると、歩けば歩くほど癖が固定します。
姿勢や体の使い方を再評価する
歩行改善は“姿勢改善”が土台になります。
しびれや感覚障害の影響も見落とさない
足裏の感覚が弱いと、歩行が安定しません。
訪問リハ・自費リハの活用で改善が加速する理由

マンツーマンで細かな歩行分析ができる
訪問型・自費リハビリでは、
“歩行の癖”を細かく見ながらその場で修正できます。
身体に合わせた負荷設定ができる
病院の時間制限や集団リハでは難しい部分です。
自宅環境で歩行練習ができるメリット
実生活の動線で練習できるのは大きな強みです。
転倒リスクの評価にも繋がります。
ヘルスウェアが歩行改善で大切にしていること
ヘルスウェアでは、
「歩き方の癖を取り除くこと」と
「正しい体の使い方を身体で理解すること」
を最重視しています。
あなたのペースで進められるマンツーマンリハビリなので、
“歩く自信を取り戻す”ことを目指します。
実際に、脳梗塞を発症後6年経過しても、歩行が変わり「装具」を外して歩けるようになった方がいらっしゃいます。
今からできる“歩行が変わる習慣”

毎日の立ち上がりを丁寧にする
立ち上がりが変わると歩き方も変わります。
歩く前の準備運動で転倒を防ぐ
特に足首の柔軟性は欠かせません。
疲れたときほど姿勢を確認する
姿勢の崩れは歩行の崩れに直結します。
まとめ:歩き方は、今からでも変えられる
脳梗塞後の歩行は、
時間が経っていても改善できます。
歩き方が変わると、生活が変わります。
「もう遅い」と感じていても、そこから改善する方はたくさんいます。
一歩ずつ、できることから始めていきましょう。