脳梗塞の後遺症は本当に治るのか。
手足の動かしにくさが続き、このまま変わらないのではと不安になる方は少なくありません。
しかし、多くの方が知らない事実があります。脳は時間が経っても回復を続ける力を持っています。
私は理学療法士として、神経系リハビリを専門に10年以上携わってきました。
この記事では、後遺症が“治る可能性”を引き出すための重要な考え方と具体的な方法を分かりやすく解説します。
読み終わる頃には、「まだできることがある」と感じられるはずです。
■脳梗塞の後遺症は”治る可能性”がある理由

「もう時間が経っているから難しい」と言われた。
「退院したらあとは現状維持」といわれて落ち込んだ。
そのような声をよく聞きます。しかし、リハビリの現場では、発症から数年経った方でも運動機能が改善する例は多くあります。
その理由は、以下の3つです。
●(1)脳には“可塑性(かそせい)”がある
「治る」という言葉には、元通りに戻るというイメージがあります。
しかし、脳神経はケガとは違い、元に戻るだけが回復ではありません。
脳は損傷を受けても、別の新しい神経回路を作り直す性質があります。
これは年齢に関係なく続く能力で、まるで配線をつなぎ替えるように、動きを取り戻していけます。
●(2)正しい刺激を続ければ反応する
体を動かすことで脳は情報を受け取り、少しずつ変化します。
適した刺激が加われば、その変化はさらに大きくなります。
●(3)身体の使い方は“再学習”できる
歩き方、手の使い方、バランスの取り方などは筋力ではなく「脳の学習」です。
学習である以上、やり方を変えれば改善は起こります。
つまり、後遺症の回復は「年数」よりも「何を・どれだけ・どう取り組むか」で決まるということです。
■ 脳梗塞後遺症の改善に差が出る3つのポイント

同じような症状でも、驚くほど回復する人と、ほとんど変化が出ない人がいます。
その差は、本人の“才能”や“年齢”ではありません。
リハビリ専門家から見て、機能の改善に影響するポイントは次の3つです。
1. 適切なアプローチを受けているか
改善しない理由の多くは“やり方が合っていない”だけです。
例えば
- 麻痺の手が固い → ストレッチだけでは改善しない
- 足が出にくい → 筋トレよりも姿勢調整が必要なことが多い
- 歩行が安定しない → 足ではなく体幹や重心の使い方が原因
適切な評価がされていないと、努力が成果につながりにくくなります。
2. 毎日の「使い方」で差が出る
歩き方・座り方・立ち方のクセは、脳に強く刻み込まれます。
例えば、
・つまずかないように小刻みに歩くクセ
・麻痺側をかばう姿勢
・体を固めて動く方法に頼る
これらは脳が“安全策”として覚えた動きですが、改善を阻害します。
日常の使い方を少し変えるだけで、大きく動きが改善することがあります。
3. 適切な負荷をかけているか
軽い運動は安心ですが、脳を変える刺激としては弱いことがあります。
・安全にできる範囲での負荷
・「できそうでギリギリできない」レベルの課題
・少しだけ難しい動作への挑戦
この「適度な負荷」が改善を加速させます。
■ 多くの人が誤解している“麻痺改善のタイムリミット”

「半年を過ぎたら良くならない」
「1年経ったらもう手遅れ」
この言葉は、現場で最も多く聞く誤解です。
医学的に、“半年で脳の回復が止まる” という証拠はありません。
正確には、
- 病院退院後はリハビリ量が減る
- 生活の中で麻痺側を使う機会が少ない
- 安全優先の歩き方に固まる
これらが原因で「変化が見えにくくなる」だけです。
時間の問題ではなく、刺激の量と質の問題です。
発症から数年たってから手が開くようになった方、
歩行が安定して買い物に行けるようになった方など、
私はたくさん見てきました。
■ 治るために絶対に外せないリハビリのポイント

回復を促す上で、特に重要なのは次の3つです。
★(1)“原因”に合わせた訓練を行う
同じ「手が動かない」でも、
神経の問題・筋肉の固さ・姿勢の崩れ・恐怖心
など、原因はまったく違います。
原因が違えば、必要なアプローチも変わります。
★(2)「動きを作る練習」が必須
多くの方が筋トレやストレッチを続けていますが、
後遺症の回復には**動作練習(タスクトレーニング)**が不可欠です。
・つかむ
・立つ
・体をひねる
・一歩踏み出す
日常動作に近い動きを繰り返すことで脳は変化します。
★(3)成功体験を積む
人間は「できた」がないと続けられません。
リハビリで少しでも成功体験を作ることが、前向きな行動につながります。
これは脳科学的にも「内側前頭前野の活性化」として重要な反応です。
■ 自宅でできる回復を促すトレーニング

難しいことをしなくても、効果のあるトレーニングはあります。
●(1)重心移動の練習
椅子に座って、左右に体重を移す。
これだけでも体幹の働きが変わり、立ち上がりが安定します。
●(2)麻痺側の手を“眺めながら”動かす
視覚情報が脳に入るだけで、神経のつながりが活性化します。
無理に動かそうとしなくてもOKです。
●(3)歩幅を「少しだけ」大きくする
歩幅を2cm広げる意識だけで歩行が改善するケースが多いです。
これは重心が前に乗るためです。
■ 回復が止まったと感じる時に見直すべきこと

よく聞く質問があります。
「半年過ぎたら治らないと聞きましたが本当ですか?」
これは誤解です。
確かに医学的には、発症から半年までの回復スピードは速い傾向があります。
しかし、半年以降に改善が止まるという意味ではありません。
むしろ、多くの方がこの時期に気持ちが落ち込みます。
それは「回復が止まった」ではなく、
回復のスピードが少し落ちただけのことが多いのです。
停滞する時期は誰にでもあります。
その時に見直すポイントは以下の3つです。
●動きを“観察”しているか
動画を撮るだけでも新しい発見があります。
●やり方が合っているか
努力の方向が正しければ、必ず変化は起きます。
●日常で麻痺側を使っているか
無意識で使わないクセは、意識しないと直りません。
■ 訪問自費リハの活用で大きく変わるケース

保険を使ったリハビリには時間・回数の上限があります。
そのため、本当に必要な量・質のリハビリが不足しがちです。
また、最近、病院のリハビリが終わった後も改善を目指す方が増えています。
その中で注目されているのが、自費リハビリです。
訪問型自費リハビリのヘルスウェアでは
- マンツーマンで長時間のリハビリができる
- 個別の原因に合わせて対応できる
- 生活場面での動きまで改善できる
という特徴があり、変化が大きい方が多いです。
私が運営する「ヘルスウェア」でも、
発症から数年経った方が歩けるようになった、
階段が楽になった、
手の動きが改善して生活で使えるようになった(箸を持てた、服の裾をつかめた など)、
というケースは珍しくありません。
患者さん一人ひとりの原因を丁寧に分析し、
分かりやすく説明しながら、改善への道筋を一緒に歩みます。
「もっと良くなりたい」
「できれば元の生活に戻りたい」
そう考える方にとって、選択肢のひとつとして知っておいてほしいと思っています。
実際にヘルスウェアをご利用いただいている方で、発症から6年以上経過している方がいらっしゃいます。
6年が経過しても、手の麻痺が改善しています。ぜひこちらの動画をご覧ください。
■ 治る未来のために今日から始めること
回復の可能性を広げるために、今日からできることは3つです。
- 麻痺側の手足を“見る”時間を作る
- 小さな成功体験を積む
- 今の身体のクセを知る(動画撮影がおすすめ)
これだけで、脳が受け取る情報は大きく変わります。
■ まとめ:諦めなければ、身体は今からでも変わる
脳梗塞の後遺症は、時間が経っても変わります。
脳には回復する力があり、その力を引き出す方法が確かに存在します。
もし今、
「もう変わらないのでは…」
と不安を抱えているなら、そう思う必要はありません。
正しい方向を知れば、身体は必ず応えてくれます。
あなたが再び「自分の力で動ける」という喜びを取り戻せるように。
そのためのサポートを、これからも続けていきます。